冬になると、「融雪剤」と書かれた袋が道路の脇に2、3袋置かれている光景をよく見られます。
この薬剤の用途は、道路の凍結防止や凍結時の雪や氷を融雪させるためのものです。北日本や、西日本でも山沿いでは冬になると昔から使用されてきたこの薬剤ですが、近年この使用に関して問題となっています。融雪剤の正体は、塩化カルシウムと言う粉末です。
塩化カルシウムは水に溶けやすく、氷や雪を0度以下でも溶けて水に変化させる性質があるため、凍結しやすい道路には頻繁に撒かれていました。しかし、塩化カルシウムはいわゆる塩化物と呼ばれる物質であり、水に溶けると塩化物イオンとカルシウムイオンに分離します。
この塩化物イオンは、鉄を腐食させる性質があり、車や建造物などの早期劣化の原因となります。これが海水などでも発生する、いわゆる塩害と呼ばれるものです。このため、冬季に融雪剤が散布されると道路わきの鉄構造物であるガードレールや電柱、ケーブルをまとめるラックや橋のケーブルなどの金属部分に大きな影響を与えます。コンクリートの構造物でも水に溶けて内部まで浸透し、金属の支柱やケーブルに達して劣化を進ませ、膨張や破断の原因となります。塩化カルシウムは海水中など自然環境にも多く存在し、毒性が少ない物質です。そのため昔から融雪剤として利用されてきた背景があるのですが、過剰な使用は鉄による様々な構造物に影響があることも念頭に置いて、気を付けなければなりません。